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草刈り考

この記事を書いた人:山本敬介

我が家の周りはほとんどが草木に覆われていて、どこまでが雑草で、どこまでがそうでないのか不明確なのだが、それでも夏には草を刈る。

草刈りは、基本的にこの鎌で。ブラシカッターは使わない主義だ。庭のある家では、ほとんどがブラシカッターを使っているようだが、化石燃料を使ってまで雑草を刈る必要がないと考えるので、ブラシカッターは使わない。

鎌を持って地面に這いつくばって草を刈るのは、人からは大変そうに見えるらしいが、実はとても楽しいものだ。

草の中には宇宙がある。草にも実は色んな草があって、昆虫がいたり、たまには鳥の巣を見つけたりする。これをブラシカッターでババババババと刈ったりすると、そんなものは一切見えないし、人間は強力な力(機械)を手にすると、うちに秘めていた凶暴さが出てくる。必要ないような場所も、どんどん刈ってしまったりする。

あまり家の周りの近いところに草があると、湿気を呼んで家が傷んだり、蚊が多くなったりするので草刈りは必要だが、暑い夏には家の周りに適度に草があることで、冷気を確保してくれる。そして、北海道では10月の末になれば草は自然に枯れて雪の下で土に還る。そんなことはだれでも知っているはずだ。待っていれば良いのである。

それでも草を刈るのは、家の周りが草だらけだと「あそこの家はだらしない」と思われるという、日本人らしい理由もある。しかし、ブラシカッターや、ましてや除草剤を使ってまで、そんな見栄を張る必要があるか。除草剤は、ベトナム戦争の兵器だ。

日が強くならない早朝に、朝露で膝を濡らしながら、草の中に頭を突っ込んで草を刈っていく。手で刈るので、自分がどんな草を刈っているのか考えながら刈ることも出来る。例えば、草の中のわらびは、来年の楽しみに丁寧に避ける。可愛い花が咲いている草は残してみる。箱庭のガーデナーのように、デザインしながら刈っていく。

また、イネ科の草は、ニワトリ用の干し草になるので、良い草が取れるととてもうれしいし、逆にオオハンゴンソウなど外来種は集中的に刈ってしまう。害虫益虫と同じように、雑草の中にも益草と害草があるということ。どこまでも人間は自分勝手だ。

ここ数年はフキを刈らない「フキ優遇措置」を実施した所、あっという間にフキだらけになってきた。フキの下にはあまり雑草が育たないので、草刈りの面積も減ってなかなかよい措置だったと思っている。優遇措置を数年続けることで、その効果が現れるというのは、なかなか行政的手法でおもしろい。

この「草刈り考」の原稿は、まさに草刈りをしながら頭の中で考えた。草刈りのような単純作業は頭の中は自由なので、色んなアイデアが湧いてくるし、哲学めいたことも考える。現代社会は常に脳だけを動かすことを強いるので、こうした時間はとても楽しい。

明日も早起きして草を刈ろう。

(山本敬介)

※エネチェンコーナーはダブル敬介(家次&山本)でお送りします。