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ロヴァニエミの街

この記事を書いた人:山本風音

ロヴァニエミの街

北緯66度32分35秒、アークティックサークル。ここより北は北極圏が広がり、夏には1日中陽が沈まない白夜が訪れ、冬には凍てつく寒さと暗闇の極夜がいつまでも続く。2014年10月下旬、僕はこのラインのほぼ真下に位置するロヴァニエミの街に降り立った。

サンタクロースとオーロラの街。人よりトナカイの数が多い自然豊かな極北のラップランド。
この街の第一印象はそんな華やかな憧れのイメージとは裏腹に、長く厳しい冬に向かってゆっくりと冬眠を始める動物のような、北国独特の悲しさと美しさが織り交ざる静かな街だった。これから確実に日が短くなり、あたりの色彩は厳しい寒さの中に溶け込んでいってしまう。

それでも街を歩きよく観察していると、どんなに寒くてもスキーウェアを着込み散歩に出かけ、雪と氷が薄く積もった路面の上をいつもと同じように通勤の自転車が走り、凍った湖の上でスケートに興じる人々の姿に出会う。家族がそろった休日にはクロスカントリーを楽しみ、赤ちゃんでさえマイナス5度の寒空の下で昼寝をする。先のスケーターたちは、氷がまだ完全に凍っていないまま待ちきれずに滑り出していた。

彼らは決して、健康のためや自然体験の重要性に駆られているのではなく、朝起きて夜眠るように、仕事に行って家事をするように、普段の生活の中で森や自然を楽しんでいた。生活自体がその土地に根ざしていた。そこに街があった。

そんなことに目を向ける余裕のない到着したばかりの僕は、初めての一人暮らしといろいろな不安を抱えつつ、運と気まぐれで来てしまったことを少し後悔しながら、遠い極北の地での2ヶ月間のインターンシップがスタートしました。

* * *

写真:街の中心から見たオウナスヨキの流れ。何の気なしに歩いていると、ふとした瞬間にはっと息をのむような景色が目に飛び込んでくる。そんなときは決まって、近くに自分と同じように目の前の景色に心を奪われている地元の人がいて嬉しくなります。