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雪と氷の世界

この記事を書いた人:山本風音

真冬の北極圏は空気がしんと張りつめて、見上げる空の移ろいは光のゆらめきそのものだ。

森では樹皮の割れ目から葉の葉脈のひとつひとつまですべてが凍りつき、衣のような白い雪を纏っている。一日の大半を暗闇が覆い、分厚い雲と降り積もった雪があたりの色彩を奪って、世界は透明の薄い膜に包まれたように、どこまでも続く静けさがあたりを満たしていた。生きるものの気配や時間の流れさえどこかへ行ってしまったような気がした。

それでも、
吸い込まれそうなほど深い夜の闇の中に、小さく光る星の明るさを見た。
張りつめた空気の終わりのない静けさの中で、静寂が音となってうるさいほどに耳に響いた。
灰色に包まれた色のない風景の中で、ひとつひとつの鮮やかさが色濃く映った。
凍りついたものの中に潜む、生き物たちの力強さをひしひしと感じた。

痛むような寒さの中では意識が強く刺激され、あらゆるものが主張するように確かにそこに存在している。世界は静かに眠っているように見えて、そのひとつひとつが力強く生きている。風景と呼ぶには、あまりにも強い。

ラップランドの大地が豊かでたくましくあるのは、その内側にこういった力強さを内包しているからだと思う。地の果てのような極北の辺境の地は、そこで暮らすあらゆるものにとっての日常であり、それこそが世界の中心だった。 見えないもの、聞こえないものの中に、目の前の世界の存在がはっきりと鮮明に、僕に訴えかけてきた。