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働き方と暮らし方

この記事を書いた人:山本風音

働き方と暮らし方

 フィンランドの人たちはどうしていつものんびりしているのだろう。

 それは周囲に森があるからだと、何かの本で読んだ。仕事に追われることなく日々にゆとりがあるからだと、暮らしてみて感じた。何をするにしても、しなければいけないということがほとんどないことに気づいた。日々の雑務や溜まった仕事を急いで片付けてまで、皆暖炉の前や森の中でゆったりと自分の時間を過ごす。

 街の中心部までおよそ30分。地元の人たちに習って、毎朝凍った道を自転車で会社へ向かう。マイナス10度前後でも、着込んだダウンジャケットとヒートテックのおかげでオフィスに着く頃には汗だくになる。 11月や12月ともなると外はまだ深夜のように暗い。「フオメンタ」と朝の挨拶を交わし、眠い目を擦りながら強めのコーヒーで無理矢理目を覚ます。

 皆と顔を合わせて一息ついた後、9時にはそれぞれ仕事に取りかかる。2時間経てば11時にランチタイム、もう2時間すれば2度目のコーヒーブレイクがあり、16時を過ぎれば皆そそくさと帰り支度を始める。金曜日の夕方に20分ほど残って作業をしていると、「もうウィークエンドだ。早く帰れ。」と怒られてしまった。

 現地の人と英語でやり取りをしていると、「Up to you」という言葉をよく耳にする。次に何をするのかも、仕事の合間に少し息抜きするのも、決めるのはすべて「あなた次第」。その少し突き放すような言い方に戸惑いつつも、相手を尊重し、自分なりのペースとやり方で物事を進めるフィンランド人らしい返事だった。その代わり、こちらからの提案には親切に協力してくれる。

 早く家に帰ってからは何をしているのか聞いてみた。習い事や趣味で自分の時間を効率よく確保しているのかと思えば、テレビを見たり編み物をしたり、ただのんびりと好きなことをして過ごすのだそうだ。夏の休暇には湖のほとりの小さなサマーコテージにこもって、1ヶ月ほど森の中で過ごし、秋には昨日家の周りで取れたたくさんのベリーのことを自慢する。

 効率的でリラックスした働き方と、素朴でのんびりとした暮らし方。すべてが理想的ではないにしても、そのどちらも分断することなく、その土地の風土や人柄に根づいていた。フィンランドの人たちは、自分たちにとって何が大切かがわかっているし、ラップランドの雄大な風景を眺めていると、そのことを言葉なしに教えてくれているような気がした。

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写真:ロヴァニエミの中心街、オフィス街やショッピングセンターが並ぶロヴァカツ通り。夕方16時前後になるとラッシュアワーが始まり、家路に急ぐ車で少しだけ道が混み合う。